6.26.2008

『フリーペーパーの衝撃』/稲垣太郎

「多メディア時代の『タダ』ならぬ存在!」と駄洒落交じりの帯のコピーとは裏腹に、中身は大真面目な本です。

『R25』『Metro Minutes』など今でこそ当たり前のように手にするフリーペーパーですが、その発行と採算ベースに乗せるまでには並々ならぬ困難があったことが、この本を読むと分かります。

その背景にあるのは、既存紙メディアの閉鎖性。ざっと印象に残った文言を挙げただけでも、これだけあります。
・「電車のホームでは気をつけろ」「女房子どもを実家に帰したか」などと日刊無料紙の発行準備中から脅しの電話が
・売店の売上が落ちるからと、当初は駅にラックを設置してもらえない
・無料誌は実は民法テレビと同じビジネスモデルなのに、広告主の理解を得られない
・だから無料誌ビジネスに携わっている人は、ほとんどが既成のやり方にとらわれない異業種からの転身者

残念だったのは、文体。論文っぽいというか、やや堅苦しい印象を受け、決して読みやすくはないのです。だからか、個人的に一番興味をかきたてられたのは、雑誌論の第一人者である電通の吉良俊彦氏との対談である最終章でした。

インターネット以外で既存メディアによる支配を揺るがす胎動の存在を知っておくことは、価値があることだと思います。