10.26.2009

『モウリーニョの流儀』/片野道郎

ジョゼ・モウリーニョはサッカー監督として、人間として、実に興味深い人物なのですが、これまで日本で出版されていた書籍というのは外国で書かれたものの翻訳ばかりでした。そのため、感覚や語調に違和感を覚えることがあったのは僕だけではないでしょう。本書の価値は、恐らく初の日本人著者によるモウリーニョ本ということにつきるのだと思います。

モウリーニョがインテルの監督となって1年目の2008-09シーズンに絞ったノンフィクションとなっており、自分のスタイルをイタリアに持ち込み、イタリアの現実に最適化していくまでを克明に描いています。自分のスタイルに固執しすぎることなく柔軟に現状に適応させていくあたり、プライドが高く我が強い選手たちを信賞必罰によってモチベートしていくあたりは、リーダー論としても秀逸です。また、売られたケンカは買う、というポリシーに基づいたメディアやライバルチーム監督との丁丁発止のやりとりは読んでいて実に爽快でした!

10.24.2009

『村上式シンプル仕事術』/村上憲郎

正直ガッカリしました。グーグル日本法人名誉会長の仕事術ということで、少しは期待していたのですが。

タイトルにある「仕事術」に該当する内容は第1部のみで、分量としては本書の1/3程度。それもさらっと読めるので、立ち読みでも十分でしょう。

第2部と第3部はビジネスパーソンとして知っておくべき宗教と経済学の概論。ただし、著者の解釈を述べただけで詳細は他に本を読んで学べという姿勢なので、あまり親切ではありません。書籍紹介が目的と言っても過言ではなく、キックバックをもらっているのではないかと勘繰りたくなるほどです。

ガッカリの極め付きは第4章。文系人間をこれでもかというくらい小バカにしています。

この程度の人が日本法人名誉会長なら、グーグルも大したことないな、とまで思ってしまいました。

10.18.2009

『人生を決めた15分 創造の1/10000』/奥山清行

フェラーリのデザインで知られるプロダクト・デザイナー奥山さんの仕事論&スケッチ集。

2500円という値段の高さからも、いわゆるデザイン本の類になるのでしょうが、それだけに終わらず、GM、ポルシェ、ピニンファリーナなど海外企業でカーデザインに取り組んできた奥山さんならではの鋭い論考が満載です。特に冒頭にある、フェラーリ会長がヘリコプターに乗り込む15分の間にスケッチを描き上げ、会長を説得したというエピソードには震えました。ただ、指摘の多くが批判的な意見だけで終わっており、じゃあどうすればいいのかという改善点まで提示できていればなおよかったと思います。

また、文章と図版が同ページに載っているのにシンクロしていないのも残念。掲載できる図版の関係上難しかったのでしょうが、それならそれで他のレイアウト方法もあったのでは? せっかくだから、ブック・デザインにも奥山さんらしさを発揮してほしかったところです。

10.17.2009

Moleskine 2010。

少々気が早いようですが、2010年の手帳を購入しました。もちろん、モノはお気に入りのMoleskine。今年は目新しいソフトカバーを使用していますが、どうもしっくりこなかったので来年はハードカバーに戻しました。

仕事のスケジュールを立てるために必要になったというのが直接のきっかけですが、早めに先を見越して計画を立てられるというのはいいものです。年の瀬になってバタバタと手帳を選ぶよりは、はるかに心に余裕を持って新年を迎えられ、さらにはいい1年を過ごせるのではないかと思っています。

10.14.2009

『資本主義崩壊の首謀者たち』/広瀬隆

信頼できる著者による信頼できる書ですね。新聞やテレビなど一般のメディアとばかり接してきた人たちには結構ビックリな内容かもしれません。

他にも今回の“金融危機”(本書によれば“金融腐敗”)の悪玉を告発した本はありますが、信憑性の薄い本も少なくありません。その点において本書は、著者の過去の実績からも十分信頼に足る裏づけがなされていると考えられます。

内容的には、米紙に載った風刺漫画を織り交ぜながら楽しく読み進められるようになっています。

10.10.2009

『ザ・バンク 堕ちた巨像』

この春公開され気になっていた映画がDVDになったので早速レンタルして見ました。

欧州の巨大投資銀行の裏取引をニューヨーク市警やインタポールが共同で捜査するが、核心に迫りそうなところでいつも重大な関係者が殺されてしまう。最後はもはや主人公の執念で頭取にたどり着くが、頭取もトカゲの尻尾だったというようなオチ。

公開時は「金融危機を予言した映画」のような宣伝の仕方でしたが、直接的には関係のないサスペンス映画です。ただ、映画中に出てくる「みんなグルなんだ」「俺を殺しても次がいる」のようなセリフからは、メガバンクや大企業、そして政府までもが関与している“陰謀論”を想起させます。世界の暗部を告発しようという製作者たちの心意気が感じられました。もし日本の配給会社がそこまで考慮した上であのようなプロモーションをしたのだとしたら大したものです。でも、それならば『ザ・バンク 堕ちた巨像』なんていう本質とズレた意味不明なタイトルはつけないか…。

個人的には、ベルリン、ニューヨーク、ミラノ、イスタンブールなど大都市を舞台にした映像が見ごたえありました。どうも雰囲気や音楽のセンスが似ていると思ったら、この監督『ラン・ローラ・ラン』の人だったんですね。