10.28.2008

『平凡な人財で非凡な成果を上げる』/及川昭

図書館利用率が高まってから、少しでも気になったり話題になったりした本を片っ端から予約して借りているのですが、そうするとホント身銭を切らなくてよかった、という類の本が多いことに気付かされます。

その最たるものが本書です。研修会社の代表が書いた組織・人材論。タイトルからして怪しいと思っていたのですが、読んでみて驚愕。中身は自社の宣伝ばかりなのです。それも、他社はダメだけどウチはいい、という小学生レベルの二元論。開いた口がふさがりません。金を積まれたなど何らかの理由があるのでしょうが、版元のダイヤモンド社にもガッカリです。

アマゾンのカスタマーレビューを見て、なおさらビックリ。6人の方がレビューを書いていたのですが、全員揃いも揃って5点満点と大絶賛のオンパレード。ところが、不自然なほどに評価していたり、誤字脱字が多かったりと文章がこなれていないので、過去のレビューを見てみたら、予想通り全員がこの本のレビューしか書いていないのです。恐らく同社の社員や関係者にレビューを書かせた、典型的なヤラセですね。

アマゾンのカスタマーレビューは一般的には、読書好きの知的度合いの高い人たちが書いているので信頼度も高いと思っています。中にはこのように悪用されるケースもあるわけですが、過去のレビューを見れば簡単に見破れるわけです。

10.26.2008

ATESが休刊。

雑誌ATESが来月号で休刊だそうです。

もともとPenの増刷としてPen Atesという名で出版されていたのに、いつの間にやらPenが取れてATESだけに。しかも、最初は豊かな食を通じたライフスタイルを提案する雑誌でなかなか面白かったのが、最近ではトヨタやらソフトバンクやらを特集するビジネス誌に変わっているし。

サイトに行ってみたら「都合によりアテスオフィシャルサイトを終了させていただきました。」だと。こりゃ、ひどい。もう少し読者に対する誠意を見せてもいいものだと思いますが。

10.23.2008

これは欲しい、Google Phone!

ついにGoogleが携帯電話を発表しました!

Google desktopがそのまま携帯に移行できる上、地図やストリートビューも閲覧可能。データは端末ではなくネットワーク(いわゆる“あちら側”)に記録されるので、紛失したり壊したりしても大丈夫というすぐれものです。

これは、i-phoneより欲しいかも。

10.21.2008

夢の猫ライフへの道のり。

友人女性が猫を買い始めたそうです。それも2匹も。それも生後3ヶ月と6ヶ月の子猫を。

さぞかしかわいい盛りかと思いきや、友人は心労を患っているご様子。というのも、2匹は最近まで半野良猫状態だったようで、近所の猫好きの方が保護したのを、友人が里親に名乗り出て飼うことになったとのこと。だから、人間不信に陥っているのか、ちょっと動いただけでびくびくしたりと、なかなか心を許してくれないそうです。友人の手の平には引っかかれた跡が。。。

夢の猫ライフが訪れるまでには、もう少し時間がかかるようです。

10.17.2008

なぜ旅先で見た映画は印象に残るのか?

旅先で見た映画は印象に残りやすい、ということを以前書きましたが、その理由が少し分かった気がします。

先日、日経BP主催、JTB協催のマーケティング・フォーラムに参加してきました。会場の日経ホールは席が非常に狭く、長時間過ごしたらエコノミークラス症候群になりそう。加えて、日経本社の7~8階ぶち抜きに位置するため、セミナー終了後のエレベーター待ちがすごい。なんて欠陥の多いホールなんだ、と憤ったというのはどうでもいいとして、なぜJTBがマーケティング?という疑問がついに明かされました。

例えば1週間前の夕食に何を食べたかは思い出せなくても、何年も前に旅先で食したものは楽しかった思い出とともに深く刻まれているもの。それは、旅行中は気分が開放的になり、ドーパミンだかの脳内物質も分泌され、意識や感覚がパワーアップしているからだそうです。

なるほど!映画が印象深いのもそういうわけか!と狭い座席で窮屈な思いをしながら、僕は膝を打ったのでした。ついでに、おせっかいながら、その裏づけに茂木健一郎さんを担ぎ出せればよかったのに、とも思ったのでした。

ちなみにJTBがやろうとしているのは、食品や化粧品などの消費財メーカーとタイアップして、旅先のホテルなどに新製品のサンプルを置いて客に試してもらい、記憶に刻んでもらおうというマーケティング手法です。まあ、言葉は悪いですが、“洗脳マーケティング”といったところでしょうか。

10.15.2008

『つまりこういうことだ!ブランドの授業』/阪本啓一

これは掛け値なしに素晴らしい本です。ブランディングの基本的な考え方をとてもよく理解できました。

生徒と講師の講義形式で話は進み、具体例がふんだんに盛り込んであるため、自社に置き換えたら?と、想像力を膨らませながら読み進めることができました。

この本でブランドにおける「パッケージ」という考え方を知ってから、カフェやレストラン、デパート、オフィスなど、あらゆる場所を見る目が変わりました。以来、物事を“賢く”見ることができるようになった気がします。

10.14.2008

『私がクマにキレた理由』

ひょうんなことからニューヨークの超セレブ一家のナニーになった主人公(スカーレット・ヨハンソン)の奮闘を描いたコメディ。

日本も格差が広がりつつあると言いますが、アメリカの金持ちはレベルが違うな、と思わされました。ただ金持ちなだけでなく、世間知らずで自己中心的。主人公に次々と無理難題を押し付ける母親の様は、『プラダを着た悪魔』の編集長と同じ。大げさに描かれていたものの、実態は大きく変わらないのでは?

その母親も、豪邸に住み、高級レストランで食事し、有閑マダムしているかと思いきや、夫の不倫に悩む。金はあっても心は満たされていない、というのが隠れたテーマではないでしょうか? その意味では、本当の主人公は母親かもしれません。

なお、邦題はThe Nanny Diariesという原題に忠実な方が良かったのでは?

http://www.kuma-kire.com/

10.13.2008

あえてお金をかけないブランディング。

先日、散歩中に良さそうなレストランを発見。

お店は2階にあるため店内は覗かなかったものの、1階に出してある看板がとても好感が持てるものでした。具体的には「当店はチャージもなく、お客様に本当においしい料理を食べていただけるよう努めます」という旨のことが手書きで書いてありました。横に貼ってある料理の写真も、いかにも素人写真という感じでお金をかけていないことが見え見え。それがかえって誠実さを感じさせ、料理もおいしそうだと思わせてしまうのだから面白い。

お洒落で洗練されたインテリア、デザイン性の高いメニューに、完璧なライティングのもとで撮られた料理写真。ブランド・ゾーンにお金をかけまくってイメージを高めるのもいいが、あえてお金をかけずに素朴さをアピールするブランディングもありだな、と思ったのでした。

10.12.2008

『転職は1億円損をする』/石渡嶺司

転職経験を有し、広い意味での人材業界に身を置く者として興味深く読ませていただきました。

早期転職のデメリットをお金に換算した点(論拠が正しいかどうかは別ですが)や、転職をあおる人材ビジネスのカラクリを白日のもとに曝した点に関しては、その勇気を称えられるべきだと思います。

が、著者の考え方に偏りがあるのは否めません。

金勘定だけを見れば、一社に長く勤めた方が得なのは自明のことですが、人が転職しようとする理由はお金だけではありません。何より、自社を相対化できず世間知らずになりやすい、という一社に居続けることのデメリットがすっぽり見落とされています。

人材ビジネスが巨大産業化することには功罪あると思います。この本も賛否両論を呼ぶことでしょう。その意味で、穿った見方をすれば、この本自体が人材ビジネスの活況に便乗したものと言えなくもありません。

社会人歴数年で何のスキルも身につけておらず、会社に貢献もできていないのに転職しようとする人を、思いとどまらせるには有効かもしれませんが。

余談ながら、ライターを名乗っている割に文章が稚拙で、誤字脱字も少なからずあった点はいただけません(出版社の責任でもありますが)。

10.09.2008

『映画の見方がわかる本』/町山智浩

『2001年宇宙の旅』『地獄の黙示録』『タクシードライバー』といった1960年代から70年代にかけてのアメリカ映画を取り上げた映画評。

必ずしもタイトル通りの内容ではなく、映画はそれ単体で理解しようと思っても限界があり、時代背景や作り手の思いなど周辺知識も知らなければ正確な理解はできない、というのが根底を流れる主張です。

実際、読んでいて目から鱗が落ちるような思いです。

例えば『2001年宇宙の旅』に出てくるモノリス。本当は人類よりはるかに高度なエイリアンが人類に道具の使い方を教えるシーンにしたかったのが、どうしてもエイリアンをうまく撮れず、やむなくモノリスにしたのだとか。

また、『地獄の黙示録』は世間で言われているほど奥の深い映画ではなく、偶然や不運が重なり、苦肉の策を繰り返した挙句、結果的に様々な解釈が可能な映画に仕上がっただけだそうな。だとすれば、かの立花隆氏が「はじめて世界文学に匹敵する映画」と力説し、上梓した『解読「地獄の黙示録」』の立場は?

『俺たちに明日はない』『卒業』『イージー・ライダー』など、いわゆるアメリカン・ニューシネマについての論考は、映画評というよりも近代アメリカの文化史・精神史を読んでいるかのよう。

とにもかくにも、読み物として非常に面白く、取り上げられている映画を見直したくなります。続編では『ブレードランナー』や『未来世紀ブラジル』を俎上に上げているとか。こちらも読まねば!

10.07.2008

『小説ヘッジファンド』/幸田真音

実態に即しているかなど、専門的なことは門外漢の僕にはよく分かりません。が、最近話題のヘッジファンドについて知るには、いい小説ではないでしょうか?

金融業界で活躍していた著者だけに、どんでん返しのストーリーや会話などは臨場感があってそれなりに楽しめました。

10.04.2008

10.01.2008

書籍審美眼が磨かれて分かった、出版不況の原因。

緊縮財政のあおりで毎月の書籍代に上限が設けられてからというもの、ある良好な変化が現れてきました。

書籍を購入する際の審美眼がかなり磨かれてきたのです。

以前は、書店やAmazonで良さそうな本を見つけると、パラパラっとめくったり、表紙が良かっただけで、中身を精査することもなく即購入していたものです。迷いが生じた場合は、「買わない本は読まない」「タイミングが重要」「これも何かの縁」などと自分を無理矢理納得させたりしながら。そのおかげで書籍代が月何万円単位になることも多々ありました。

それが最近は、「本当にこの本は自分の役に立つだろうか?」「費用対効果に優れているだろうか?」「信頼できる出版社・著者によるものだろうか?」などと、厳正な審査を行うようになったのです。

必然的に、図書館とブックオフの利用率もかなり上がりました。要は、ブックオフにまだ売りに出されていない比較的新刊、もしくは図書館では予約が半年以上先まで埋まっている人気書籍以外は新刊で買わないということです。

そんな厳格な目で書籍を見るようになってみると、本当に出版する意味があるのかどうか首を傾げざるを得ないような書籍が巷にあふれていること。

出版不況と言われて久しく、書籍離れ、メディアの多様化、紙代など原材料費高騰などがその理由に挙げられていますが、本当にお金を払ってまで読みたいと思える書籍があまりないというのが最大の要因のような気がします。