4.30.2009

『建築家 安藤忠雄』/安藤忠雄

坂本龍一に引き続き、安藤忠雄の自伝も読みました。

自伝と言うと生い立ちから順を追って語っていくというイメージがありましたが、本書は建築家になる前のことは全12章のうちの1章を割いたのみで、実質的には安藤氏が自身の手掛けた作品について語った建築論といった趣です。

ただ、その建築論が半端じゃありません。ゲリラという姿勢を貫き、行政やクライアントを含む“社会”と闘い続ける姿には感動を覚えます。むしろ“闘争記”と言った方が適切かもしれません。

「現実の社会で、本気で理想を追い求めようとすれば、必ず社会と衝突する。大抵、自分の思うようにはいかず、連戦連敗の日々を送ることになるだろう。それでも挑戦し続けるのが、建築家という生き方だ」。学生たちに語りかけたこの言葉が、安藤氏のすべてだと言っても過言ではありません。

ブックデザインも素晴らしいです。何と言ってもアラーキーの撮った表紙の写真が強烈なインパクトを放っています。書店で見かけたとき、安藤氏の眼差しから目が離せず、思わず手に取ってしまいました。中には多数の図版が挿入されておりイメージを含ませながら読み進むことができます。版型も一般の規格と少し変わっており、安藤氏の姿勢を象徴しているかのよう。

4.29.2009

ゴールデン読書ウィーク、スタート。

訳あって今日から12連休です。

会社が経済危機の影響で業績不振で、給与カットの見返りとして休みを多くくれたというだけなのですが。

ただ降って湧いた貴重な休みだけに、無為に過ごすのではなく、今まで読みたいと思っていながら読めていなかった本を軒並み読破しようと考えています。

忙しさにかまけて更新を怠っていたブログも、もっと更新できればいいな、と。。。

4.27.2009

『レッドクリフⅡ』

面白かった『Ⅰ』の続編なので必然的に『Ⅱ』も見に行ったわけですが、、、戦闘シーンばかりのただのアクション映画で残念でした。

三国志に興味を持つきっかけになったのは、良かったかな?

4.26.2009

『音楽は自由にする』/坂本龍一

坂本龍一の自伝です。

坂本龍一の音楽は中学生の頃からずっと好きだったというのもあり、一気に読み終えてしまいました。ピアノとの出会い、名編集者だった父(三島由紀夫の『仮面の告白』などを担当)との関係、学生運動への傾倒、ミュージシャンや文化人との幅広い交友関係、YMO、俳優としての活動、映画音楽など、本人の口から語られる言葉は現在の日本の音楽史の貴重な記録です。個人的には、戦後の日本を引っ張ってきた全共闘世代の回顧録としても面白かったです。

ただ、それは坂本龍一という人間が面白いのであって、本の作りには疑問を呈してしまいます。一番は『エンジン』という車雑誌に掲載された連載をまとめたものであるため、深堀りが少ないこと。もっと知りたい、と思うところで次の話題に移ってしまうのがやや残念でした。

4.25.2009

『決壊』/平野啓一郎

読み終わってしばらく放心してしまいました。著者がタイトルに込めた意味に、じっくりと向き合うことを強要されるように。

“決壊”という言葉からは、ただキレるとか壊れるというのではなく、堤防で抑えていたものが抑えきれなくなるというニュアンスを感じます。日本という社会の至るところで決壊が生じているということを、著者はこの上下二巻にわたる重苦しい長編を通して訴えたかったのでしょう。

平凡な一家を襲った連続バラバラ殺人事件を軸に物語は進みます。が、最初の殺人が起こるのは上巻の最後の方。それまでの登場人物たちの日常の中にこそ決壊する要素が見え隠れしていることを丹念に描いていきます。教育の問題点、ネット社会の恐ろしさ、警察の抱える矛盾など、様々なテーマを著者なりの視点でえぐっていきます。著者の平野氏は僕の2歳下ですので、感覚が近しいことを感じました。特に酒鬼薔薇事件に関しては、著者なりの解釈を展開したかったことがうかがえます。

決して読んでいて気持ちのいい小説ではありません。ただ、一度読み出したら、途中で本を置くことを否応なく拒否するような磁力があります。読者が試されているような気にさせられる、現代日本を生きる上での踏み絵のような小説です。

4.18.2009

『スラムドッグ$ミリオネア』

ようやく日本でも公開になり、待ってましたとばかりに初日に見に行ってきました。アカデミー賞で散々話題になったし、イギリスに住んでいる友人とか何カ月も前からいい作品だと言っていただけに、どれだけ歯がゆい思いをしたことか!

そして、やはり見て良かった! クイズの問題がすべて主人公に関連があるなどストーリーができすぎの感もありますが、それは映画だから良しとしましょう。

この映画の魅力は、臨場感。ムンバイのスラム街は疾走感たっぷりに、タージマハルは荘厳かつ美しく描き、行ったことがなくても行った気にさせられるなど観光映画としての側面もあると思います。振り返れば、ダニー・ボイル監督は代表作『トレインスポッティング』でも、エジンバラという街の魅力をうまく引き出しながら、そこで麻薬漬けになって暮らす底辺の若者たちを描いていました。街と市井の人を描くのがうまいですね。

その上で訴えたかった大切なメッセージは「お金がすべてじゃない、お金より大切なものがある」。同じ境遇ながら、金と権力の虜になっていく兄との対比や、彼がクイズ・ミリオネアに出場した真の理由が明らかになった終盤、最後の質問に本当のヤマ勘で答えるところに象徴的に表れています。金融資本主義への反省かまびすしい今年3月のアメリカでアカデミー賞を8部門も受賞したのも、よく分かる気がします。

そして最後は、歌って踊ってのマサラムービー。ハッピーで清々しい気分で締めくくられる、まさに時代が求めていた映画だと言えます。


http://slumdog.gyao.jp/

4.14.2009

残念なお店。

得意先を接待するために、ランチに行ってきました。某タワー40階にある、決して安くはなかろう中華料理店。ところが、入店して席についてすぐに聞かれたことに驚きました。「食後のお飲みものはいかがなさいます?」。

何だってこれから食事を楽しもうというときに、食後のことを考えなければならないのでしょう? あくまで店側の準備の都合で、全然お客さんの立場に立っていない態度に興ざめしました。おまけに出てきた料理は味は悪くはないものの、とにかく量が少ない。中華の高級店って、なんでこうなんでしょう? もうあの店に行くことはないでしょう。

4.03.2009

春の珍事。

今日は駅にまつわる春の珍事に2つ遭遇。

まずは朝のラッシュ時の渋谷駅。山手線が人身事故により運転見合わせとなり騒然とする中、ホームの片端で倒れている男性とそれを救護する駅員が。そんな駅員に向かって「池袋には行くにはどうすればいいですか?」と何のてらいもなく尋ねるおばちゃん。ところが駅員も駅員で、普通に答えてしまっていたり。救護されていた男性の「え、俺のことは?」と言いたげな不安そうな顔が忘れられません。

続いて昼過ぎに客先を訪問するために向かった九段下駅。電車を降りると、「2番出口を封鎖します! 地上に出られる方は1番と3番出口をご利用ください!」というアナウンスが。テロでもあったのかと思いきや、実態は靖国神社と千鳥が淵という桜の名所に向かうおばちゃん連中と法政大学の入学式が重なり、ものすごい混雑になっていたのでした。おばちゃんパワーと若者パワーがもろにぶつかる熱気を想像してみてください。さしずめ絨毯爆撃をかいくぐる兵士のような気分で外に逃れたのでした。

4.02.2009

リバプールがチャンピオンズリーグで強い理由?

今日の日経夕刊にリバプールのベニテス監督がチェス好きだという記事が載っていました。

なるほど、システムありきのターンオーバー制を敷き、グランドを広く使うあのサッカーは、まさにチェスそのもの。監督にとって選手一人ひとりは、チェスの駒のようなものなのでしょう。やたらと勝負強いところも、チェスで鍛えた勝負思考の産物か?