4.26.2011

『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』/加藤嘉一

タイトルにひかれ、純粋に日中関係に興味があり読んでみました。以前、日経新聞に紹介されていたことから著者の存在は知っていましたが、テレビなどは見たことがなかったので、今回初めて著者の主張を知りました。

まず、著者が日本と中国の架け橋となっていることの意義は素直に認められるべきだと思いました。これだけ近しい国なのに、日本人の本音を中国人に伝えられる人物が現れていなかったのが不思議なくらい。本書を通じて中国人のライフスタイルや考え方など、他では知り得なかった知見をいくつか得ることができました。著者は20代という若さだからこそ、中国人の懐に容易に入り込めたのではないでしょうか。

その上であえて苦言を呈します。率直に言って著者の主張が分かりにくい、というのが偽らざる感想です。もともと本書は中国で出版されたものを翻訳し加筆修正したため、ターゲットが日本人に絞りきれていない箇所が散見されました。中国の話と日本の話が交互に展開されるため、あまりのめまぐるしさに混乱してしまうのです(例えば「帰国したとき」という文が、中国に戻ったのか日本に帰ってきたのかすら明瞭ではない)。また、言葉に勢いはあるものの、意外と言っていることは表面的。日本を離れているためか、あまり日本の現状を知らないのではないか、と思える部分もありました(例えば現代日本人女性の考察など)。普段も間違ったことを中国人に伝えているのではないかと危惧してしまうほどです。さらに言えば、著者個人には興味がないのに、自身の生い立ちや輝かしい過去をひけらかされても正直困ってしまいます(巻末に著者の年表をつけられても…)。

とはいえ、どんな形であれ発信しないことには何も始まらないわけで、著者の勇気は称えたいです。

4.22.2011

楽しみだけど、素直には喜べない南米選手権参加。

楽しみだけど、素直には喜べない。そんな複雑な気持ちです。

すったもんだの末、日本代表が南米選手権に出場することがほぼ決定したようです。ただ、この期に及んで欧州組が15人集まらなければ辞退するとか抜かしているし、その欧州組の招集も南米任せ。万が一集められなければ、本大会まで2ヶ月余りというような段階で辞退するのでしょうか? それこそ無責任極まりない…。

もちろん、南米の競合とアウェーでの真剣勝負が見られるというのは楽しみでなりません。でも一度は辞退したのに、再考を促され軽々と翻意してしまった、そのプロセスはいただけない。日本サッカー協会が発表した辞退理由、Jリーグなくして代表なし、というのは非常に理にかなっています。選手たちはJリーグを中心とする所属クラブから給与をもらい、そこでの活躍をもとに代表に選ばれるわけですから、この順番を間違えてはいけない。だから、最初に辞退を申し出たとき、残念な気持ちがありながらも大いに理解を示したものです。なのにあっさりと翻意してしまうとは。

どうやら日本サッカー協会の人たちは、南米人の行動原理をあまり理解していないように思えます。僕も最近、南米人とよく付き合うので彼らの思考回路の一端が少しずつ見えてきました。僕の分析では、彼らは自分のメリットになることであれば、とりあえず“ダメもとでも言ってみる”人たちです。プレーを見ていても分かります。明らかなファウルを犯しても、レフリーに必死で嘆願してみる。それで万が一、自分たちに有利なように事が運んだらもうけもの。そんな例は枚挙にいとまがありません。僕は別にこれが悪いとは思いません。彼らが営々と築いてきた知恵/流儀なのでしょうから。

日本からのテレビ放映権料が入らなくなることを恐れたアルゼンチンサッカー協会は、日本のための大会にする、などとダメもとで言ってみた(そもそも「日本のための大会」というのは具体的に何をどうすることなのでしょう?)。ところが、日本がまんまと食いついてきた。だから、南米連盟が責任をもって欧州選手を招集する、などと口からでまかせを言わざるを得なくなった。というのが僕の勝手な想像ですが、あながち外れていないのではと思っています。南米連盟に丸投げした日本サッカー協会の外交力のなさに将来性のなさを感じ取ってしまうのです。