5.27.2008

『何故あの会社はメディアで紹介されるのか?』/西江 肇司

ここ10年ほどで業界3位のPR会社に急成長したベクトル。そのCEOがPRのコツを伝授した本です。

実は、前職でこの会社を取材したことがあります。高級レストランかバーかと見紛うほどのお洒落なラウンジスペースに通され、恐ろしく早口で話題豊富な美人PR担当の女性を取材しました。これくらい頭の回転が速くないとPRの仕事はできないのかと思ったほど。その彼女が「うちの会社は社長がすごい」と言っていたのが印象的だったのですが、この本を読んで、言わんとしていることが分かった気がします。

というのもこの社長、PRのことを何も知らずに業界に参入し、ノリとフットワークの軽さだけで会社を大きくしたようなもの。でもその根本にある精神は、タダでメディアに載せてもらおうという下心ありありの態度でメディアと接するのではなく、メディアがそのまま情報を掲載できるように相手のニーズ・形態に合わせて加工した情報を提供するということ。つまり、相手が喜ぶことを先回りして実践するというビジネスにおいて至極真っ当な手法なのです。だから、「PRなんて300くらいの事例を覚えてしまうだけでいい」「実はPRって大したことない」とまで言ってのける。あっぱれです。

身近な事例が豊富でヒントも満載。読んでいて面白い上に、仕事のアイデアが次々と湧き出てきて、寝る間も惜しんで読破してしまいました。PR、広報に限らず広くマーケティングに関係する仕事をしている人は必読でしょう。

ただ難点をつけるとすれば、本の作りが粗いこと。「フィーチャーする」という言葉をしきりに「フューチャーする」と言っていたり、人名の漢字を間違えていたり、「SEO」のことを「Search Engine Marketing」と書いていたり(おいおい)。きちんと校正がなされていない本はどんなに内容がよくても信頼性は薄れてしまいます。幻冬舎ともあろうものが、これはいただけませんね~。