3.07.2008

『やる気!攻略本』/金井壽宏

人材業界のスーパースターとも言える、神戸大の金井壽宏先生の新刊です。

率直な感想を言えば、先生には申し訳ないのですが、あまり面白くありませんでした。これを読んだだけですぐに「やる気」をコントロールできるようになるわけではなく、「やる気!シート」を記入するというエクササイズを繰り返すことで、自分の方針を把握していくというプロセスを経なければなりません。言ってみれば参考書に過ぎないわけです。

また、文章が変なノリになっているのも、個人的には好きになれませんでした。学者の著作からは考えられないようなポップな装丁と軽いタッチの文章にして、広く一般の読者を取り込みたいということなのでしょうが、残念ながらスベってしまっていると思います…。ただ、これは編集者の責任でしょう。

それでも、やる気のメカニズムについては何となく分かりました。

1 大きな目的を抱いたことで現状と目的のズレを感じる(ズレ)
2 現状と希望のズレを感知して、緊張が発生してしまう(緊張)
3 緊張が発生したことに対して「不快である」と感じる(不快)
4 不快が発生したことに対して「低減したい」と感じる(低減)
5 不快の低減のために働いているうちに実現可能な目的(や希望)を見いだす(発見)
6 見いだした目的に対して、それを達成したいと感じる(目的)
7 見いだして達成したいと感じた目的が、かなえられる(達成)
8 目的がかなえられ、満足したり、リラックスしたりする(成就)
9 満足やリラックスしたら、活動が止まり、ゆるむことがある(停止)
10 活動が止まったら、より大きな目的を抱くようになる(成長)
再び1へ

自分がこのサイクルのどこにいるか意識するだけで、多少気持ちが整理されるような気がします。

ちなみに、先生の著作で言えば『働く人のためのキャリアデザイン』は、内容の濃密さもさることながら、ジャズやブルースからの引用があったりと、単なる学術書にはない知的興奮に満ちており、すばらしい本だと思います。