9.18.2009

『日本の雇用--ほんとうは何が問題なのか』/大久保幸夫

非常に興味深く読ませていただきました。もっと評価され、話題になってしかるべき良書だと思います。

リクルートワークス研究所の所長だけあって、豊富なデータで裏づけを取りながら、現在の雇用問題について鋭く切り込んでいます。

特に印象に残ったのは以下の点:
・雇用ニーズは経済活動の必要性から生まれるのであり、経済の活性化を経ずに国が雇用を作り出そうとするのは愚行。
・短期時間労働のニーズがない日本にワークシェアリングは根付かない。
・失業者の7割は失業給付金をもらえていないという雇用保険の限界。
・非正規社員を「ある種の」正社員にすることで、正社員を多様化するという提案。

雇用されている人がそれぞれの立場から理論武装しておくのに最適な1冊だと思います。

ところで、この本は講談社現代新書から出ています。新書ブームの中ですっかり影が薄くなった気がしますが、僕が高校生の頃は新書と言えば岩波か中公かこの講談社現代新書しかありませんでした。最近はタイトルだけ刺激的で中身はスカスカという週刊誌みたいな新書が多い中で、本書のシンプルでストレートなタイトルと重厚で骨太な議論は好感が持てました。