9.15.2009

『こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる』/魚谷雅彦

コカ・コーラは嫌いですが、コカ・コーラのマーケティングやブランディングには興味があります。また、著者の魚谷雅彦さんにも、以前に何かの本で目にして以来興味がありました。そんなことで読んでみたのがこの本。

世界最高のブランドとして知られるコカ・コーラ。しかし、本書では本家コカ・コーラのブランディングよりも、日本コカ・コーラのローカルブランドであるジョージア、爽健美茶、QOOなどの事例がメインです(その意味で「120年変わらぬ商品が、今も売れ続ける理由」という帯のコピーは、やや偽りあり?)。YouTubeで当時のCMを見ながら読み進めていきました。

面白かったのは、著者がアンチ・マーケティングとも言えるような通常のセオリーを無視したマーケティング手法を実践してきたこと。市場調査など科学的根拠を頼りにするのではなく、“直感”を混ぜながら戦略を決めていき、周囲の反対を押し切っていく。このあたりの精神は、B to Bのマーケティング関係者にも役立つ情報だと思われます。著者のマーケティングにかける思いには感服します。

残念だったのは、マーケティング・コストやCM効果による売上・利益率の推移といった数字の話がほとんど出てこなかったこと。売上に結びつかないマーケティング活動は意味がありませんから。潤沢な費用を投下していたであろうことは容易に想像つきますが、一般企業のマーケターの感覚からは大きく離れるかもしれません。

グローバル・カンパニーで活躍する人物のキャリア・ストーリーとして読んでも興味深いです。