4.20.2008

『走ることについて語るときに僕の語ること』/村上春樹

村上春樹はあまり好きな作家ではありませんでした。

学生時代から何度も彼の小説を読もうとしたけども、あの荒唐無稽な独特の世界に入り込めなかったり。村上春樹好きの男性は夢見がちな人が多いため(あくまで僕の実感ですが)「ハルキスト」などと揶揄したり。アメリカに住みながら日本のことを書いていたのが気に食わなかったり。あまりに現実離れしているのは、現実と向き合わないからだと勝手に判断してしまっていました。

だから村上春樹が走る作家であり、毎年1回はフルマラソンを走り、トライアスロンにまで挑戦しているというのは相当意外でした。「走る」ことを通して「書く」ことを語ったのがこの作品です。走ることは、作家として必要な体力・持続力・集中力を鍛えることができるそうです。本書には村上春樹が走っている写真がいくつか収められているのですが、確かに50代とは思えないほど引き締まったしなやかな体つきをしています。ハングリーな精神と肉体を持つことは作家には不可欠だと僕は考えます。

何より僕が一番引かれたのが、走っているときは無心になれるというくだり。無心って、最近の僕の中ではキーワードです。仕事でもプライベートでも、周りの雑念を取っ払い無心になることって、めっきり少なくなったように思います。でも経験上、余計な考えが脳裏をよぎったり、欲に惑わされると、物事はうまくいかないもの。サッカーやっているときでさえ、プレー中は色々なことを考えながらも、ボールを蹴る瞬間は無心にならないとうまくミートすることができません。野球やゴルフもそうでしょう。その無心の状態をトレーニングによって人為的に作り出すことができるとすれば、僕はその術をぜひとも手に入れたいと思うのです。

村上春樹のこと、少し見直しました。そして、僕も無性に走りたくなったわけです。