10.09.2008

『映画の見方がわかる本』/町山智浩

『2001年宇宙の旅』『地獄の黙示録』『タクシードライバー』といった1960年代から70年代にかけてのアメリカ映画を取り上げた映画評。

必ずしもタイトル通りの内容ではなく、映画はそれ単体で理解しようと思っても限界があり、時代背景や作り手の思いなど周辺知識も知らなければ正確な理解はできない、というのが根底を流れる主張です。

実際、読んでいて目から鱗が落ちるような思いです。

例えば『2001年宇宙の旅』に出てくるモノリス。本当は人類よりはるかに高度なエイリアンが人類に道具の使い方を教えるシーンにしたかったのが、どうしてもエイリアンをうまく撮れず、やむなくモノリスにしたのだとか。

また、『地獄の黙示録』は世間で言われているほど奥の深い映画ではなく、偶然や不運が重なり、苦肉の策を繰り返した挙句、結果的に様々な解釈が可能な映画に仕上がっただけだそうな。だとすれば、かの立花隆氏が「はじめて世界文学に匹敵する映画」と力説し、上梓した『解読「地獄の黙示録」』の立場は?

『俺たちに明日はない』『卒業』『イージー・ライダー』など、いわゆるアメリカン・ニューシネマについての論考は、映画評というよりも近代アメリカの文化史・精神史を読んでいるかのよう。

とにもかくにも、読み物として非常に面白く、取り上げられている映画を見直したくなります。続編では『ブレードランナー』や『未来世紀ブラジル』を俎上に上げているとか。こちらも読まねば!