10.12.2008

『転職は1億円損をする』/石渡嶺司

転職経験を有し、広い意味での人材業界に身を置く者として興味深く読ませていただきました。

早期転職のデメリットをお金に換算した点(論拠が正しいかどうかは別ですが)や、転職をあおる人材ビジネスのカラクリを白日のもとに曝した点に関しては、その勇気を称えられるべきだと思います。

が、著者の考え方に偏りがあるのは否めません。

金勘定だけを見れば、一社に長く勤めた方が得なのは自明のことですが、人が転職しようとする理由はお金だけではありません。何より、自社を相対化できず世間知らずになりやすい、という一社に居続けることのデメリットがすっぽり見落とされています。

人材ビジネスが巨大産業化することには功罪あると思います。この本も賛否両論を呼ぶことでしょう。その意味で、穿った見方をすれば、この本自体が人材ビジネスの活況に便乗したものと言えなくもありません。

社会人歴数年で何のスキルも身につけておらず、会社に貢献もできていないのに転職しようとする人を、思いとどまらせるには有効かもしれませんが。

余談ながら、ライターを名乗っている割に文章が稚拙で、誤字脱字も少なからずあった点はいただけません(出版社の責任でもありますが)。