8.12.2008

『アドルフに告ぐ』/手塚治虫

マンガを滅多に読まない僕ですが、手塚治虫は別格。中でも『アドルフに告ぐ』は、数年に一度読み返したくなる、とても奥の深い作品です。

「アドルフ・ヒトラーはユダヤ人だった」という説をモチーフに、3人のアドルフたちがたどった運命を交錯させるように描いた作品。フィクションですが、サスペンス仕立てな上に、ベルリン・オリンピックや日中戦争、真珠湾攻撃、中東戦争など史実を元にしているためリアルに感じられ、歴史の勉強にもなります。一市民の目から見た戦争というものがリアルに描かれていて、戦争を知らない世代も追体験できます。物語の狂言回しである峠草平の一途で信念を持った生き方に、心を打たれます。

なお、ヒトラー=ユダヤ人説は、その後、歴史家たちによって否定されたそうです。だからと言って、この作品の価値が貶められることはありません。

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