8.07.2008

『シネマ・ハント ハリウッドがつまらなくなった101の理由』/柳下毅一郎

最近はほとんど異常気象のように暑くて、休みの日も外出を避ける傾向に。すると必然的に部屋にこもって映画を見る機会が増えるわけで、最近は週4~5本ペースで映画を見ています。

そんなときのお供になるのが、この本。雑誌『Esquire』で連載されている辛口の映画評をまとめたものです。映画の内容そのものよりも、その映画が生まれた社会背景や、映画界の大きな流れを俯瞰しながら個別の作品を取り上げているのが特徴。

例えば、僕が大好きな映画『ファイト・クラブ』の評論。

文明化とは野性を失うことである。二千年かかって達成された西欧文明の世界制覇は、人類が獣性を喪失してゆく過程だと見ることもできる。人は文明によって去勢されているのだ。(中略)『ファイト・クラブ』は、去勢された男たちが自分の肉体を取り戻そうとあがく物語である。

映画評というよりも社会学のテキストを読んでいるかのような知的興奮を楽しめます。

また、副題の通り、ハリウッド大作を笑い飛ばすような辛口の論評は読んでいて爽快。

最後に、著者の言う、ハリウッド映画がダメになった理由を少しだけ。ズバリ、犯人は技術革新だそうです。つまり、労せずしていい映像を撮れるようになったがために、映画はきれいな映像をつなぎ合わせるだけのものになってしまった。観客もそれを喜んでしまった、と。