5.05.2009

『新・都市論TOKYO』/隈研吾・清野由美

建築家の隈研吾さんとジャーナリストの清野由美さんが、東京の都市開発について対談した本です。俎上に上っているのは、汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、そして町田。それぞれの街の特徴と、日本の都市計画の問題点が非常に分かりやすく述べられています。

象徴的なのが汐留。旧国鉄の貨物駅跡地という広大なスペースだったのが悲劇でした。資金的に誰もリスクを負えなくなったことから複数のディベロッパーに分割した結果、建物の向きも外観もまるで統一感のない高層ビルが乱立することとなったのです。汐留を歩くときの分かりにくさや無機質な感じは、ここに起因していたのですね。

それと対照的なのが、森ビルが1社で開発した六本木ヒルズ。貸しビル業の限界を嫌というほど感じていた森ビルが17年もかけて500人もの地権者と地道な交渉を続け、執念の果てに完成させた現代東京の象徴です。ただ、ここでは逆に森稔社長のワンマン体制ゆえに、円環構造という新たな分かりにくさが生じてしまいました。六本木ヒルズも、行くたびに必ずといっていいほど道に迷ってしまいます。

本書を通じて感じたのは、スクラップ&ビルドを繰り返すことでしか土地の価値を上げられず、自転車操業的に再開発を繰り返す東京という都市の節操のなさでした。

書籍として見れば、内容は抜群に面白いのですが、図版がやや少なめ(しかも白黒)なのと地図がないのが難点です。…と思ったら、集英社のウェブにカラー図版が載っていました。しかも驚くべきことに本文(恐らく全文)が読めます! というか、このウェブの連載をまとめのが本書のようです。
http://shinsho.shueisha.co.jp/column/toshi/index.html