5.07.2009

『おくりびと』

アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品。巷では生と死や家族愛をテーマに語られていますが、僕は偏見と戦う人の物語だと感じました。

納棺師という“人に言えない仕事”をすることになった主人公。妻には出ていかれ、幼馴染からは後ろ指を指される。でも一般論として、人が偏見を持つのは対象のことを知らないからです(世の戦争や人間関係におけるいざこざも大抵そうでしょう。相手のことを知れば知るほど、攻撃しようという気はなくなるはずです)。

この映画では、偏見を持った人たちが、身近な人物の死を通じて納棺師の仕事と存在意義を目の当たりにしたとき、理解や共感が生まれます。そういう意味で、これはコミュニケーションをテーマにした映画だとも言えるのではないでしょうか。ピンク映画という“人に言えない仕事”をしてきた滝田監督も、評価されたことで溜飲が下がったことでしょう。

“人に言えない仕事”ではないですが、“人に言ってもなかなか分かってもらえない仕事”をしている僕にとっても、大いに共感できる部分がありました。