7.16.2008

『察知力』/中村俊輔

「がんばる」――これほど嫌いな日本語はありません。

最近ではオリンピック代表に選ばれた選手たちがこれを連呼していて、聞くたびに嫌気が差します。この言葉、抽象的すぎて、何をどれだけすれば「がんばった」ことになるのかが全く不明です。この言葉を口にするような人は、率直に言って大したことのない人でしょう。根性論・精神論でしか物事に対処できていないであろうから。自分の課題をきちんと言語化できていないであろうから。

さて、この本。中村俊輔は「がんばる」という言葉を一度も使っていません。代わりに、「監督の考えを察知する」「相手選手の意図を察知する」「相手選手よりも先に動き出す」「あえて厳しい環境を選ぶ」というように具体的・戦略的に言い換えています。本書に出てくる言葉遣いにも、ピッチ上でのプレー同様に俊輔ならではのこだわりが見られます。これが一流と、そうでない選手の違いなのでしょう。

希代のファンタジスタがいかに「努力」しているのか。サッカー好きだけでなく、一般の人が読んでも、努力するためのヒントが得られるはずです。