7.07.2008

英国貴族の結婚式に出席してきました!

Westminster(国会議事堂)というロンドンの象徴的な建物で、着飾った紳士淑女たちが出席する結婚式。映画の世界に紛れ込んだかのような、まさに夢のような1日でした。

結婚したのは、10数年来の仲良しである日本人女性とイギリス人男性。新郎の父がHouse of Lords(貴族院)に所属しているため、Westminsterという一般の人はなかなか入れないような場所での結婚式となったわけです。こんな希有な機会、逃すわけにはいきません。勇んで日本から飛んできました。

ドレスコードは「モーニングもしくはラウンジ・スーツ(まあ、普通のスーツのことです)」。せっかくの機会なので、もちろんモーニングで。一世一代の仮装大賞ですもん。前日にレンタルショップに借りに行きました。驚かされたのは、店員の仕事の早さ。その店員は、いわゆる絵に描いたような初老のイギリス人男性。目的を聞き、僕の背格好を見た瞬間、ちゃちゃっと衣装をセレクト。試着してみるとサイズも完璧。西欧人体型の衣装ばかりで、自分に合うサイズはないんじゃないかという不安は杞憂に終わりました。入店してから出るまで、ものの5分も経っていないでしょう。無駄な動きが一切ない完璧な仕事ぶりに、英国の伝統を感じました。

前夜、酒を飲みながら食事しているところへ新婦から電話が。なんと、突如アッシャーという案内係を頼まれることに! 当初担当することになっていた人が、遅れてしまうことが判明したとのこと。日本から来ている僕がイギリスやヨーロッパからの出席者を案内するというのも変な気がしますし、やり方も段取りも分かっていないだけに心配にはなりましたが、これはこれで貴重な経験。何より新婦の役に立てるだけに、喜んで引き受けました。

いよいよ当日。14時、観光客の波を押し分け、式の1時間前にWestminsterの通用口に到着。セキュリティチェックを受けてビッグベンの下の大聖堂へと足を踏み入れました。そこには、すでに新郎側の親族やベストマン(新郎の付添人。一番の親友に頼むことが多いようです)が。シルクハットをかぶった品格あふれる男性や、つばの長い帽子をかぶった婦人たちがいて、緊張は極限に。でも、皆さんとてもフレンドリーに挨拶してくれたりして、すぐにリラックスすることができました。

15時の式の時間が近づくと、徐々に出席者たちが来場してきました。アッシャーやってよかったのは、出席者たちと一通り挨拶ができたこと。もちろん軽い会釈程度ですが、様々な人種・国籍の人たちと笑顔で挨拶できるというのは気持ちのいいものです。中には10数年振りに顔を会わせる旧友もいたり。出席者たちを礼拝堂へと案内し、無事にアッシャーの仕事を完了。アッシャー用の席で、式の様子を最前列で目にするという栄誉にまで恵まれました。

非常にイギリス的だなと思ったのが、家族関係。新郎側の家庭環境がやや複雑と言いますか、父と産みの母が離婚しているのですが、当然のごとくそれぞれの連れ合いが出席しているのです。つまり継母だったり、異母弟妹だったり、その従兄弟だったり、さらにその従兄弟だったりと、家系図でも書いてもらわなければ理解できないような複雑な背景を持った人たちが楽しげに談笑したり、仲良く親族写真に収まったりしているのです。血縁に潔癖さを求める日本では、ちょっと考えられないかも?

荘厳な式が終わると、議事堂見学を経て、Westminster内のラウンジでのカクテルパーティー開始。テムズ川脇のテラスで、London EyeやCity Hallを望む絶好のロケーションでシャンペンを飲む。こんな贅沢に与っていいのでしょうか? 感涙です。最後の方では新郎の父によるスピーチが。ウィキペディアによれば、貴族院は「世界で最高の演説が聞ける場所と評する論者がいる」そうですが、本当に素晴らしいスピーチでした。「私と新婦の父には多くの共通点があることが今日判明しました。生まれた年、身長、そして素晴らしい息子・娘がいることです」。最初の一言で出席者たちの心をつかむと、ユーモアを交えたり、この日誕生日を迎えた子どもへハッピーバースデイの歌を贈ったりしながらのスピーチ。さすがです。

カクテルパーティーが終わると、ダブルデッカー(二階建てバス)を貸し切りロンドン観光をしながら披露宴会場へと向かいました。ちなみに、新郎新婦はピンクのロールスロイス。








披露宴は、これまた豪華な会員制のクラブで。日本みたいに、新婦が父への手紙を読むといったお涙ちょうだい系の演出は一切なし。代わりに、新婦の父のスピーチがあったのですが、これまた素晴らしいものでした。「私はティピカルな日本人です」というつかみの言葉で笑いを誘うと、メモも見ずに英語で堂々たるスピーチ。さすが、中東など海外に長く赴任していたビジネスマンです。その後スピーチしたベストマンが「私はメモを見ながらですみません」と断りを入れたほどでした。

イギリスの結婚式は余計な演出がなく、新郎新婦とゆっくりお話しできるのがいいです。近くのホテルのロビーで午前3時半まで飲み、長く夢のような1日は幕を閉じたのでした。