1.24.2010

『マルコムX』

マルコムXって、その風貌や名前からして怪しげな人物だと思っていました。キング牧師とは対照的に、暴力的手段も辞さずに黒人解放運動を指導した、くらいの。それが、この映画を見たら認識が180度変わりました。結局のところ、彼は利用されただけなんですね。

そもそも父が黒人解放運動家で、マルコムが子どもの頃に殺害されてしまう。マルコムは当然のようにチンピラの道を歩むわけですが、窃盗の罪で服役中、そそのかされて急進的な教団に傾倒してしまう。頭が良くて、度胸もあって、カリスマ性があったから、出所後は教団のスポークスパーソンに据えられてしまった。ところが、教団のいかがわしさに気づき、メッカへの巡礼を経て考え方も融和されたら、今度は教団から敵対視され命を狙われるはめになってしまう。。。時代に翻弄されたその悲劇的な人生を見ていたら、何とも心が痛みました。

映画作品としては素晴らしいと思います。3時間半近い長編かつセンシティブなテーマを扱っているにもかかわらず、重苦しさは感じさせません。それどころか、色鮮やかなスーツに身を包みダンスホールを躍動するシーンは圧巻。当時の記録映像も交えながら、最後はネルソン・マンデラ氏が登場してメッセージを発するなど、人種差別について考えさせられる作品となっています。