4.30.2009

『建築家 安藤忠雄』/安藤忠雄

坂本龍一に引き続き、安藤忠雄の自伝も読みました。

自伝と言うと生い立ちから順を追って語っていくというイメージがありましたが、本書は建築家になる前のことは全12章のうちの1章を割いたのみで、実質的には安藤氏が自身の手掛けた作品について語った建築論といった趣です。

ただ、その建築論が半端じゃありません。ゲリラという姿勢を貫き、行政やクライアントを含む“社会”と闘い続ける姿には感動を覚えます。むしろ“闘争記”と言った方が適切かもしれません。

「現実の社会で、本気で理想を追い求めようとすれば、必ず社会と衝突する。大抵、自分の思うようにはいかず、連戦連敗の日々を送ることになるだろう。それでも挑戦し続けるのが、建築家という生き方だ」。学生たちに語りかけたこの言葉が、安藤氏のすべてだと言っても過言ではありません。

ブックデザインも素晴らしいです。何と言ってもアラーキーの撮った表紙の写真が強烈なインパクトを放っています。書店で見かけたとき、安藤氏の眼差しから目が離せず、思わず手に取ってしまいました。中には多数の図版が挿入されておりイメージを含ませながら読み進むことができます。版型も一般の規格と少し変わっており、安藤氏の姿勢を象徴しているかのよう。