4.26.2011

『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』/加藤嘉一

タイトルにひかれ、純粋に日中関係に興味があり読んでみました。以前、日経新聞に紹介されていたことから著者の存在は知っていましたが、テレビなどは見たことがなかったので、今回初めて著者の主張を知りました。

まず、著者が日本と中国の架け橋となっていることの意義は素直に認められるべきだと思いました。これだけ近しい国なのに、日本人の本音を中国人に伝えられる人物が現れていなかったのが不思議なくらい。本書を通じて中国人のライフスタイルや考え方など、他では知り得なかった知見をいくつか得ることができました。著者は20代という若さだからこそ、中国人の懐に容易に入り込めたのではないでしょうか。

その上であえて苦言を呈します。率直に言って著者の主張が分かりにくい、というのが偽らざる感想です。もともと本書は中国で出版されたものを翻訳し加筆修正したため、ターゲットが日本人に絞りきれていない箇所が散見されました。中国の話と日本の話が交互に展開されるため、あまりのめまぐるしさに混乱してしまうのです(例えば「帰国したとき」という文が、中国に戻ったのか日本に帰ってきたのかすら明瞭ではない)。また、言葉に勢いはあるものの、意外と言っていることは表面的。日本を離れているためか、あまり日本の現状を知らないのではないか、と思える部分もありました(例えば現代日本人女性の考察など)。普段も間違ったことを中国人に伝えているのではないかと危惧してしまうほどです。さらに言えば、著者個人には興味がないのに、自身の生い立ちや輝かしい過去をひけらかされても正直困ってしまいます(巻末に著者の年表をつけられても…)。

とはいえ、どんな形であれ発信しないことには何も始まらないわけで、著者の勇気は称えたいです。