3.28.2010

The Reluctant Fundamentalist/Mohsin Hamid

今年に入ってからBook Clubなるものに通っています。月に一度、読書好きが集まり、課題図書を読んで感想を述べ合うというもの。ディスカッションが好きな欧米ではよくある形態で、東京でもいくつか行われていることを知り、参加することにしました。僕は現在2つのクラブに通っていますが、いずれも参加者はアメリカ人をはじめとする欧米人が中心で、日本人も数人交じっています。

4月の課題図書として読んだのがこの本。このクラブがなければ、パキスタンの小説を読むことはまずなかったでしょう。そして、世界にはこんな小説もあるんだ、という新鮮な驚きに包まれました。

「すみません、何かお困りですか? いえ、怪しいものじゃないんです。私はアメリカに住んでいたことがあって、アメリカが大好きなんですよ」。パキスタン第二の都市ラホールにあるカフェで、パキスタン人青年がアメリカ人旅行者に声をかけるという設定。全編が青年の一方的な独白という形で進みます。18歳でアメリカに渡り、有名大学を出て、大手コンサルティング会社に勤め、上司に認められ、高給に恵まれてパキスタンにいる家族に仕送りし、白人女性に恋をする。貧しい国から来たものが夢見るようなアメリカン・ドリームを実現したのですが…。タイトルを直訳すれば「気乗りしない原理主義者」。なぜ彼は気乗りしないのか? なぜ原理主義に傾倒するようになったのか? 次第に明らかにされていきます。

最初は語り口の面白さからコメディだと思いましたが、徐々に青年の独白は真剣度を増していきます。青年の経歴と著者の経歴がかぶることから、著者自身の体験が主人公に反映されていると考えてよさそうです。恐らく著者は、9.11以降、急速に内向的になったアメリカという国家を糾弾したかったのでしょう。コメディ、ミステリー、恋愛、政治など、様々な要素が詰まった斬新な小説でした。