3.26.2010

テンはなぜトキを襲撃したのか?

ちょっと前のことですが、佐渡島のトキ襲撃の一報を聞いて真っ先に思い起こしたのが阿部和重の『ニッポニアニッポン』という小説でした。

コンプレックスの塊のような引きこもり青年が、自らの存在を証明するためにトキ密殺を企てるというストーリー。なぜトキかというと、自らの名前・鴇谷春生に鴇(トキ)という漢字が入っており、自らの忌まわしい過去を抹殺するころになるだろうと考えたことに加え、トキの学名ニッポニアニッポンが日本を象徴しており、日本という国家に対して制裁を与えることになるだろうと妄想したから。たしか10年くらい前の小説なんで詳細は忘れましたが、当時、閉塞感に苦悩する若者の見えない叫びを見事に言語化した傑作だと感心した覚えがあります。

さて、この度のトキ襲撃にもきな臭さを感じてしまったのは僕だけでしょうか? 一躍有名になったテンという動物。名前くらいは聞いたことがあっても、ほとんど何も知りませんでした。今回の行動が「おいらの存在を世間に知らしめてやる」というテンの意を決したものだったとしたら…。はたまた、仮に鴇谷春生と同じような悩みを持った係員の作為を持った行動だったとしたら…。なんてこちらも勝手に妄想してみたりして。