広瀬隆・著『原子炉時限爆弾』に紹介されていたので、見てみました。1979年当時は公開直後にスリーマイル島事故が発生し、大ヒットしたそうです。
30年以上前の映画ですが、問題の本質は全く変わっていません。住民を無視し、資本の論理で原発運転を続け、事故が起きても隠そうとする電力会社、大事なスポンサーを失うことを恐れ表立った批判にまで踏み込めないマスコミ…。福島第一原発でも同じような丁々発止があったのだろうと想像し、否が応でも今回の事故と重ね合わせてしまいます。むしろ反原発の気運は当時の方がはるかに強いことが伝わってき、広瀬隆が嘆いていた我々の危機感のなさを感じ入りました。
映画作品としては、やはり古臭さは感じてしまいます。サスペンスですが、ストーリー展開はある程度先が読めてしまいます。また事故発生中、作業員たちが汗ひとつかかずに対応している様子があまり緊迫感がなかったように思いましたが、当時はこの程度の演出で良かったのでしょう。また、若き日のマイケル・ダグラスが製作者として名を連ね出演もしていますが、今の方がカッコいいです。
3.25.2011
『チャイナ・シンドローム』
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1.25.2011
『ソーシャル・ネットワーク』
久々の更新となりました。しばらくブログから離れツイッターに軸足を移していたのですが、やはりある程度まとまった考えを書こうと思ったら140字は短すぎました。
さて、話題の映画『ソーシャル・ネットワーク』を見てきましたが、期待に違わぬ大傑作でした。今や全世界に5億人の登録者を抱え、総アクセス数でグーグルを抜き、世界一のウェブサイトとなったフェイスブック。ハーバード大学在学中にフェイスブックを立ち上げ、弱冠26歳にして最年少の億万長者となった男マーク・ザッカーバグの物語です(フェイスブック側は認めていないようですが)。
この映画の何がすごいって、とにもかくにも脚本です。映画はマークとガールフレンドの口論から始まり、彼のうっとうしいまでの理詰めの追及から、その頭脳明晰ぶりや変人ぶりがまず明らかにされます。しかし、実はこれ以降、マークが自分の考えを表明する場面はほとんど登場しません。映画の大半は、訴訟シーンと周囲の人たちのマークとの関わりや感情のフラッシュバックだけ。これでマーク・ザッカーバーグという人間を浮き彫りにしていくわけです。例えれば『市民ケーン』と同じ構図(実際、本作を“21世紀の『市民ケーン』”と評するレビューも目にします)。
それにしても、最先端のテクノロジーを駆使し、生き馬の目を抜くビジネスに身を投じる若者たちを描いているにもかかわらず、そこで渦巻くのはカネ・友情・嫉妬・権力・階級といった人類普遍のテーマであることに何とも切なくなります。『ソーシャル・ネットワーク』というタイトルは、創業者が最も社会性がないことの皮肉に思えてなりません。いずれにせよ、旬のネタをこれほど見事に調理したデイビッド・フィンチャー監督の手腕に脱帽です。
唯一残念だったのは、トレーラーで流れていた「クリープ」(レディオヘッドのカバー)を本編でもエンドロールでも耳にしなかったこと。この曲はまるで教会で歌われる賛美歌のように幽玄な響きがあるのに、内容は“変態”について。これほどマーク・ザッカーバーグを的確に表現しており、この映画を締めくくるのに相応しい曲はなかったと思うのですが。
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5.07.2010
『パイレーツ・ロック』
1966年のイギリスを舞台にした映画。当時UKロックがアツイのに、唯一のラジオ局BBCには1日45分までしかロックを流してはいけないという規制が。そんな中で、政府の規制に反対し、北海に浮かぶ船から24時間ロックを流して多くのリスナーを獲得した海賊ラジオ局「レディオ・ロック」の物語。
実話をもとにしているそうですが、個人的に感慨深いものが。僕がラジオを聴くようになったのは幼少時代のイギリス(1980年代前半)。毎週日曜日午後に4時間にわたってBBCで放送されるTop40に熱心に耳を傾け、テープにも録って繰り返し聞いたものでした(エアーチェックという言葉懐かしいなあ)。ロックがふんだんに流れるようになった背景には、こんな熱い闘いがあったとは!
ただし、映画の出来は今一つ。先の読める展開ばかりで予定調和的。『ラブ・アクチュアリー』もそうでしたが、リチャード・カーティス監督の作品からはイギリスのいい面を無理矢理こしらえようとする嫌らしさを感じてしまいます。まるでCool Britania政策の一環にすら思えるほど。
また、映画中では60年代ロックばかりだったのが、エンディングロールに続々と登場するアルバム・ジャケットには最近のものまで含まれるなど時代を超越しすぎ。まるで統一感がないのが残念でした。どうせなら60年代ロックへのトリビュートにすればよかったのに。
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5.04.2010
『フロスト×ニクソン』
1974年に行なわれ、アメリカのテレビ史上最高の視聴者数を記録したという対談を映画化したもの。
ウォーターゲート事件で辞任したニクソンに、イギリスのテレビ司会者フロストが対談を申し込む。ニクソンとしては高額な報酬に加え、プラス面をアピールして政界復帰への足掛かりを得たいという目論見が。一方のフロストには、アメリカのショービズ界進出という下心が。対談は4回にわたって収録されることに。
ドキュメンタリー・タッチの映像と音楽が知的興奮を掻き立てます。特に対談の場面は、手に汗握る緊張の連続でした。
ただ、やはり解せなかったのが、それまで全く隙がなく格の違いを見せつけていたニクソンが最終収録前夜あたりになって急に動揺してしまうこと。映画の中にもボクシングの比喩がたくさん出てきましたが、ノーガードの打ち合いというよりは、終始リードしていたニクソンが最終ラウンドで勝手に自滅したみたいに感じられてしまいました。
また、フロストも能天気でいい加減な男なのか、真の切れ者なのかが最後まで不明でした。1回目の対談の前日にガールフレンドとパーティーに行くなど余裕をかましていたかと思ったら、スポンサーがなかなか集まらず苦悩したり、最終対談の前になって突如やる気を見せたり。フロストについて調べようにも、日本版wikipediaに載っていない!
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4.15.2010
『月に囚われた男』
あのデイビッド・ボウイの息子、ダンカン・ジョーンズの長編初監督作品。大好きなSF映画ということもあり、躊躇なく見に行くことにしました。
個人的には、『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』に匹敵する傑作だと思いました。というか、両作品へのオマージュと言ってもいいほど、随所に影響が。
近未来。ルナ・インダストリー(いわゆる資源メジャー)に雇われ、3年任期で一人、月へと資源の採掘に派遣された男の物語。唯一の話し相手は身の回りの世話をしてくれるガーティというコンピュータ。地球で待つ妻と幼子に会えるのを心待ちにしながら、黙々と任務をこなしていきます。ところが、任期終了まであと2週間というところで、幻覚を見るようになったり、誰もいないはずの基地に自分と瓜二つの人物が現れるなど異変が…。ガーティの制止を振り切り、謎を解こうとするサム(この場面は、『2001年宇宙の旅』のボーマン船長とHALのやりとりを彷彿とさせます)。そこで驚愕の事実を知ることになるわけです。
ネタバレになってしまいますが、すぐに分かることなので言ってしまいましょう。要は彼はクローンだったのです。つまり、妻や幼子というのは彼の記憶に埋め込まれた虚構で、彼はルナ社にいいように利用されていたわけです。この場面、自分の出自を知ったサムの心情にどこまで感情移入できるかで、この映画の印象や評価は大きく変わってくるでしょう。
『ブレードランナー』は、自分たちが人間ではないと知ったレプリカントたちが、自分たちを作った企業に復讐しに行く映画。『ブレードランナー』が素晴らしいのは、レプリカントを通じて「人間とは何か」という根源的な問いを発しているからです。『月に囚われた男』も、クローンを通じて同様のテーマを投げかけているわけです(サムがルナ社に復讐しに行ってもおかしくないでしょう)。SF映画って空想だからこそ大胆な設定や極論を展開できるわけで、思い切りのいいテーマに挑戦したダンカン・ジョーンズに拍手です!
そして余談ながら、どうしてもボウイの影を見てしまいました。主人公サムは、ボウイの初ヒット曲となったSpace Oddityのトム少佐を地で行くようだし(後に明かされたように、実は麻薬中毒者で幻覚を見ていた点も相通じます)、ボウイが宇宙人を演じた映画『地球に落ちてきた男』の逆バージョンにも思えます(だから邦題も『月に囚われた男』なのか? ただし、原題はシンプルに「Moon」)。この映画はイギリスでは新人映画賞などを総なめにしたそうですが、親子そろって「月」つながりの作品が出世作となるとは…!
http://moon-otoko.jp/
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2.27.2010
『ブラインドネス』
もし突然目が見えなくなったら? ポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマゴの小説を原作とした映画『ブラインドネス』は、人間が生きる希望とは何か、人間の尊厳とは何か、といった究極の問いを投げかけます。
ある日突然失明するという疫病が蔓延した某都市を舞台にストーリーは展開します。接触感染することが分かったことから、政府は患者を強制的に隔離します。収容施設では日に日に患者が増大し、目が見えないことから争いは絶えず、衛生状態も悪化。すると「王」を名乗り、供給される食料を管理しようとする人物が現れ…。実は一人だけ、夫のそばにいたいからと、目が見えるのに収容施設に潜り込んだ女性がいました。彼女は「王」への戦いを挑んでいきます。
疫病の原因が明らかにされないこと、なぜ一人だけ感染しないのかをあげつらうことは野暮です。こういったシチュエーションに陥ったら人間はどういう行動を取るのか、いつ治るとも分からずいつ施設を出られるとも分からない中、何を希望に生きていくのか、を疑似体験することにフォーカスすべきなのですから。
施設内では人種、国籍、職業、社会的地位といった属性は無意味です。お互いの年齢も肌の色も顔も分からない中、話す言葉だけで人間性を判断して連帯していく。目が見える世界では人種差別に苦しんだあろう眼帯をした黒人の老男性が、「今まで生きてきた中で一番幸せだ」と言った場面は感動的です。目が見えない人たちの中で、ただ一人目が見える女性は「神」です。でも彼女はその状況を悪い方向に利用しようとしません。あくまで夫に献身的に寄り添っていたいだけ。そこに絶対的な愛を感じます。
極限状態の中でも人間としての尊厳を保つことが果たして自分にはできるのか、見ながら考えさせられました。そして原作を読みたくなりました。恐らくこの内容は映像より活字の方が、よりリアリティを持って迫ってくるでしょうから。
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1.24.2010
『マルコムX』
マルコムXって、その風貌や名前からして怪しげな人物だと思っていました。キング牧師とは対照的に、暴力的手段も辞さずに黒人解放運動を指導した、くらいの。それが、この映画を見たら認識が180度変わりました。結局のところ、彼は利用されただけなんですね。
そもそも父が黒人解放運動家で、マルコムが子どもの頃に殺害されてしまう。マルコムは当然のようにチンピラの道を歩むわけですが、窃盗の罪で服役中、そそのかされて急進的な教団に傾倒してしまう。頭が良くて、度胸もあって、カリスマ性があったから、出所後は教団のスポークスパーソンに据えられてしまった。ところが、教団のいかがわしさに気づき、メッカへの巡礼を経て考え方も融和されたら、今度は教団から敵対視され命を狙われるはめになってしまう。。。時代に翻弄されたその悲劇的な人生を見ていたら、何とも心が痛みました。
映画作品としては素晴らしいと思います。3時間半近い長編かつセンシティブなテーマを扱っているにもかかわらず、重苦しさは感じさせません。それどころか、色鮮やかなスーツに身を包みダンスホールを躍動するシーンは圧巻。当時の記録映像も交えながら、最後はネルソン・マンデラ氏が登場してメッセージを発するなど、人種差別について考えさせられる作品となっています。
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12.04.2009
ルパン三世はベルモンドだった!
ルパン三世が『リオの男』のジャン・ポール・ベルモンドをモデルにしていたということを知り納得。確かにあのしなやかな動きやひょうひょうとしたキャラは、ソックリです。
ちなみに、『ダーティーハリー』を見て、Wikipediaでダーティーハリー→クリント・イーストウッド→山田康雄(イーストウッドの吹き替え)→ルパン三世とたどって判明しました。Wikipediaってほんと面白い。見出すと止まらなくなり、あっという間に数時間経っているなんてことも。
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10.10.2009
『ザ・バンク 堕ちた巨像』
この春公開され気になっていた映画がDVDになったので早速レンタルして見ました。
欧州の巨大投資銀行の裏取引をニューヨーク市警やインタポールが共同で捜査するが、核心に迫りそうなところでいつも重大な関係者が殺されてしまう。最後はもはや主人公の執念で頭取にたどり着くが、頭取もトカゲの尻尾だったというようなオチ。
公開時は「金融危機を予言した映画」のような宣伝の仕方でしたが、直接的には関係のないサスペンス映画です。ただ、映画中に出てくる「みんなグルなんだ」「俺を殺しても次がいる」のようなセリフからは、メガバンクや大企業、そして政府までもが関与している“陰謀論”を想起させます。世界の暗部を告発しようという製作者たちの心意気が感じられました。もし日本の配給会社がそこまで考慮した上であのようなプロモーションをしたのだとしたら大したものです。でも、それならば『ザ・バンク 堕ちた巨像』なんていう本質とズレた意味不明なタイトルはつけないか…。
個人的には、ベルリン、ニューヨーク、ミラノ、イスタンブールなど大都市を舞台にした映像が見ごたえありました。どうも雰囲気や音楽のセンスが似ていると思ったら、この監督『ラン・ローラ・ラン』の人だったんですね。
9.13.2009
『ブロークン・イングリッシュ』
あのジョン・カサヴェテスとジーナ・ローランズの娘、ゾエ・カサヴェテスの監督デビュー作。どうせ親の七光りだろうし、タイトルとスチール写真からチープな恋愛ものだろうと推測し、あまり期待しないで見たら、意外と奥が深く印象的な映画でした。
平たく言えば、ニューヨークを舞台にした30代独身女性の婚活映画です。主人公ノラはきれいで性格もいいのに、いい出会いに恵まれず、自分が世界一男運の悪い女だと思っている。ところが、気乗りせずに行ったパーティーで帰り際にフランス人のジュリアンと出会う…。
これだけで展開は読めてくるものですが、実はジュリアンを追って行ったパリでの自分探しがメインテーマ。仮にこの映画を前半(ニューヨーク編)と後半(パリ編)に分けるとしたら、これほど雰囲気ががらりと変わってしまう映画も珍しい。前半は典型的なアメリカ映画っぽく、後半は観客に答えを委ねるような終わり方に象徴されるようにフランス映画っぽい。正直、男目線からすれば解せない場面も多々あるのですが、同じような境遇の女性は大いに共感するのではないでしょうか。僕の周りにもノラのような女性がいくらかいるので、オススメしよっと。
映像がとても瑞々しく印象的です。中でも驚いたのが、ニューヨークを撮るのがうまいこと。さすがカサヴェテス家の血筋を引いている?
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9.12.2009
『恋のゆくえ ~ファビュラス・ベイカー・ボーイズ~』
先日BSでやっていたので録画。20年近く前、高校生の頃に見て強烈に印象に残っている映画です。大人な映画だな~って、その世界観にたまらなく憧れたのを覚えています。
酒場をどさまわりしていたしがないピアノデュオ兄弟が、女性シンガーを入れたことから一気に売れるようになる。ところが、弟と女性シンガーが恋に落ちてしまったことから歯車が狂い始める…。という、ありがちなストーリーなんですが、脚本に無駄がなく、出演者たちの演技もいいので、お洒落で秀逸な作品に仕上がっています。マイ・ファニー・バレンタインをはじめとするジャズのスタンダードまで楽しめるというオマケつき。邦題はひどすぎですが。。。
恋に落ちてしまったものの、プライドが邪魔してしまったり、駆け引きを繰り広げる2人の心情が、今ならよく分かります。
6.07.2009
『ハゲタカ』
楽しみにしていた映画版『ハゲタカ』を見てきました。息つく間もないくらいスリリングな映画でした!
日本を象徴するような巨大企業アカマ自動車に中国系ファンドが敵対的買収を仕掛けてきた状況に、アカマの経営陣やメーンバンクはどのように対抗するのか。日本の基幹産業である自動車業界のノウハウを外に流出させていいものかという議論。それに加え、新旧ハゲタカが以前に同じ会社に勤めていたといった因縁などが絡み、登場人物がそれぞれの正義を貫こうとする様子が実にスリリング。
アカマ自動車は、個人的にはトヨタと日立を足して二で割ったイメージを勝手に抱いていたのですが、十分、現実に起こりうる話だと思いました。最後はウルトラCの秘策が飛び出るのですが、これもリーマンショックをモチーフにしています。上映中、自分だったらどのような解決策を提示するか考えながら見ていましたが、とても及びませんでした(苦笑)。
http://www.hagetaka-movie.jp/
5.07.2009
『おくりびと』
アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品。巷では生と死や家族愛をテーマに語られていますが、僕は偏見と戦う人の物語だと感じました。
納棺師という“人に言えない仕事”をすることになった主人公。妻には出ていかれ、幼馴染からは後ろ指を指される。でも一般論として、人が偏見を持つのは対象のことを知らないからです(世の戦争や人間関係におけるいざこざも大抵そうでしょう。相手のことを知れば知るほど、攻撃しようという気はなくなるはずです)。
この映画では、偏見を持った人たちが、身近な人物の死を通じて納棺師の仕事と存在意義を目の当たりにしたとき、理解や共感が生まれます。そういう意味で、これはコミュニケーションをテーマにした映画だとも言えるのではないでしょうか。ピンク映画という“人に言えない仕事”をしてきた滝田監督も、評価されたことで溜飲が下がったことでしょう。
“人に言えない仕事”ではないですが、“人に言ってもなかなか分かってもらえない仕事”をしている僕にとっても、大いに共感できる部分がありました。
5.04.2009
『グラン・トリノ』
クリント・イーストウッド製作・監督・主演の映画。本人はこれが最後の出演作だと公言しているそうです。
朝鮮戦争に従軍した際の栄光を胸に古い価値観を保ち続ける頑固老人と、その隣に引っ越してきたモン族の一家。モン族の少年が不良たちにけしかけられ老人の愛車グラン・トリノを盗もうとしたことから、老人との交流が始まります。老人がうだつの上がらない少年に「男とは」「生きるとは」を身をもって示していくというストーリー。
途中までは老人のあまりの偏屈ぶりが笑えるなどコメディっぽい要素があるのですが、途中から人種や暴力といった重いテーマへと徐々に移行していきます。最後はある意味ハッピーエンディングであるものの、映画館のあちらこちらからすすり泣きの音が。心に沁み入るような珠玉の作品です。
http://wwws.warnerbros.co.jp/grantorino/
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4.27.2009
4.18.2009
『スラムドッグ$ミリオネア』
ようやく日本でも公開になり、待ってましたとばかりに初日に見に行ってきました。アカデミー賞で散々話題になったし、イギリスに住んでいる友人とか何カ月も前からいい作品だと言っていただけに、どれだけ歯がゆい思いをしたことか!
そして、やはり見て良かった! クイズの問題がすべて主人公に関連があるなどストーリーができすぎの感もありますが、それは映画だから良しとしましょう。
この映画の魅力は、臨場感。ムンバイのスラム街は疾走感たっぷりに、タージマハルは荘厳かつ美しく描き、行ったことがなくても行った気にさせられるなど観光映画としての側面もあると思います。振り返れば、ダニー・ボイル監督は代表作『トレインスポッティング』でも、エジンバラという街の魅力をうまく引き出しながら、そこで麻薬漬けになって暮らす底辺の若者たちを描いていました。街と市井の人を描くのがうまいですね。
その上で訴えたかった大切なメッセージは「お金がすべてじゃない、お金より大切なものがある」。同じ境遇ながら、金と権力の虜になっていく兄との対比や、彼がクイズ・ミリオネアに出場した真の理由が明らかになった終盤、最後の質問に本当のヤマ勘で答えるところに象徴的に表れています。金融資本主義への反省かまびすしい今年3月のアメリカでアカデミー賞を8部門も受賞したのも、よく分かる気がします。
そして最後は、歌って踊ってのマサラムービー。ハッピーで清々しい気分で締めくくられる、まさに時代が求めていた映画だと言えます。
http://slumdog.gyao.jp/
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3.29.2009
『告発のとき』
「イタリア300年の政争はルネッサンスを生んだ。スイス500年の平和は鳩時計を生んだだけだ」とは映画『第三の男』の悪役ハリー・ライムの名台詞。戦争を題材にした優れた作品を目にするたびに、この名言を思い起こします。
この映画を見たときもそう。イラク帰還兵の失踪事件の真相を父親が追い、次第に息子がイラクで体験した壮絶な事態に行きつくという映画。父自身、元憲兵で熱烈な愛国主義者。ところが事件を調べるうちに、今の米国がどうしようもなく病んでいることを痛感するようになります。それを象徴するのが逆さに掲げられた星条旗。これは「どうにもならない、助けてくれ」という救難信号を示します。
イラク帰還兵の間にPTSD(心的外傷ストレス障害)が急増しているという事実を知った映画監督兼脚本家のポール・ハギスは、この話を映画にしなければいけないと痛切したそうです。周囲の反対を押し切ってアメリカを告発するような作品を撮り上げた彼の勇気に拍手です。
ただ、せっかくのいい映画なのに邦題が意味不明。原題はIn the Valley of Elahで、聖書に出てくるダビデとゴリアテの戦いの場所、今のイラクを指します。これはアメリカという巨大権力に映像作品という飛び道具で立ち向かう、ポール・ハギス自身のメタファーでもあります。
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3.20.2009
2.21.2009
『スカーフェイス』
アル・パチーノが『ゴッドファーザー』以上の名演技を見せ、名作との誉れが高かったので見てみましたが…、残念ながら僕にとっては駄作でした。
キューバからアメリカに亡命し、麻薬取引で名をあげたトニー。野心に満ちあふれ、裏社会でのアメリカン・ドリームを実現したものの、次第に誰も信用できなくなり、最後は最も身近な人に銃口を向けられるという物語。
『ゴッドファーザー』のような文学性がなく、ただの抗争ものに終わってしまっている点が残念。アル・パチーノの演技も過剰な印象で、『ゴッドファーザー』での静かな中に闘志を秘めた演技の方に僕は軍配を上げます。アル・パチーノはこの後しばらく俳優としての低迷期を迎えますが、それを象徴するようなエンディングです。
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2.18.2009
『ゴッドファーザー』に男の生き方を学ぶ。
ここ数日、僕の頭の中ではあのゴッドファーザーのテーマ曲がひっきりなしに流れています。BSで『ゴッドファーザー』三部作を連続で見て以来、あの世界観の虜になってしまったようです。
実は高校生の時にも一通り見たのですが、当時は複雑な人物関係が把握できなかったり、あまりに長すぎて途中寝てしまったりと、きちんと見たとは言えませんでした。
それが今見ると、あまりの奥深さに脱帽。映画史に残る名作と言われる理由がよく分かります。三代にわたるコルレオーネ一族の壮大な物語。マフィアなので暴力・殺人もいといませんが、義理人情に篤く、何より「家族を大切にしないものは男じゃない」というドンの言葉からは、男の生き方を学べます。
『ゴッドファーザー』の魅力は、この原作および脚本の秀逸さ、黒の中の黒を表現した映像美、ニーノ・ロータの哀愁漂う音楽、コッポラ監督による演出など色々あると思いますが、やはり何と言っても名優たちによる名演技の対抗戦でしょう。マーロン・ブランドの落ち着き払った風格に、アル・パチーノの冷酷な眼差し、そして若き人格者を完璧に演じきったロバート・デニーロ。この三人を中心にジェームズ・カーンやロバート・デュバルが脇を固めているのですから。
それだけに、PartⅢのソフィア・コッポラはやはりいただけません。愛娘を女優に育てたいというコッポラの親心でしょうが、名優たちの中に素人が一人混じっただけで、画面から緊張感が失われてしまいました。コッポラ監督も言うように、PartⅢは別モノとして捉えた方が良さそうです。
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