3.25.2011

『チャイナ・シンドローム』

広瀬隆・著『原子炉時限爆弾』に紹介されていたので、見てみました。1979年当時は公開直後にスリーマイル島事故が発生し、大ヒットしたそうです。

30年以上前の映画ですが、問題の本質は全く変わっていません。住民を無視し、資本の論理で原発運転を続け、事故が起きても隠そうとする電力会社、大事なスポンサーを失うことを恐れ表立った批判にまで踏み込めないマスコミ…。福島第一原発でも同じような丁々発止があったのだろうと想像し、否が応でも今回の事故と重ね合わせてしまいます。むしろ反原発の気運は当時の方がはるかに強いことが伝わってき、広瀬隆が嘆いていた我々の危機感のなさを感じ入りました。

映画作品としては、やはり古臭さは感じてしまいます。サスペンスですが、ストーリー展開はある程度先が読めてしまいます。また事故発生中、作業員たちが汗ひとつかかずに対応している様子があまり緊迫感がなかったように思いましたが、当時はこの程度の演出で良かったのでしょう。また、若き日のマイケル・ダグラスが製作者として名を連ね出演もしていますが、今の方がカッコいいです。

3.24.2011

『原子炉時限爆弾』/広瀬隆

今話題の書、Amazonでは在庫切れなのを書店でたまたま入手できました。

内容の信憑性について賛否両論あるようですが、読まないよりは読んだ方がいいと思いました。自分が、地震大国であり資源小国である日本に住む上で知っておくべき基本知識をあまりに知らなさ過ぎていたことに、今さらながら気づかされました。福島第一原発の事故に関しては、すべてが本書の通りになっているわけではありませんが、大筋では著者の不安が的中しています。政府発表や何某大学教授といった権威を闇雲に信じるのではなく、この混沌とした状況を自分の頭で判断できるようになるための一つの材料として有効です。

本書の優れている点は「分かりやすさ」です。日本列島の国土の成り立ち、地震の起きるメカニズム、原子力発電や放射性物質の原理、日本の原発が持つ耐震性の構造的欠陥などについて、一般の人の疑問に答えるかのように噛み砕いて説明してくれています。これは著者が学者ではなくジャーナリストだからこそ可能であったことでしょう。原発の専門家からは懐疑的な目を向けられたり、相手にされなかったりしているそうですが、それはあまりに痛いところを突いているからでは?

3.19.2011

『ほんとうは、どうなの? 原子力問題のウソ・マコト』/上坂冬子

福島第1原発の状況が予断を許さない今、原発について多様な立場を知りたいと思い手に取ってみました。しかし、この本はひどすぎました。中曽根康弘をはじめとする原発推進派重鎮と著者との対談集で、一方的な原発礼賛のオンパレードに終始しています。あまりに客観性に欠けるため、本当はあるであろう原発のメリットすら理解できませんでした。大事故へと発展した今、本書でしきりに「安全」を強調する推進派の言い分がすべて絵空事に思えます。