5.30.2009

『グローバルリーダーの条件』/大前研一、船川淳志

グローバル人材の育成に関して名高いお二人の対談だけに、内容はそれなりに面白いですし、役立つところも多々ありました。それでも、読後の満足度は決して高くはありませんでした。その理由は主に以下の2点です。

・船川さんが憧れの大前さんと対談したことで舞い上がっている感があり、いつもの船川節が少ない。

・両者とも言っていることはもっともなのだが、過去の著作やどこかで語られていることばかり。

ついでながら、英語はニュアンスを使い分けなければならない、と言っているにも関わらず例文の英語が間違っています(p125)。序章で、アメリカではしかるべき出版社なら1、2年もかけて厳しくチェックした上で出版すると述べており、あまりにも安易に売れそうな本を出す、と日本の出版界を批判しているのに、本書もその類になっているわけです。

5.28.2009

利他のバルサと利己のマンU。

チャンピオンズリーグ決勝のバルセロナ対マンチェスター・ユナイテッドは、予想外の一方的な内容でバルセロナが勝利。結果は2-0ですが、4-0とか5-0とかの大差になってもおかしくありませんでした。

バルサのプレーを見ていると、選手一人ひとりの間に「美しく勝て」というクラブのDNAが浸透していることがうかがえます。メッシとクリスチャーノ・ロナウドの“世界No.1”対決も、メッシの圧勝でした。ロナウドが個人プレーに走り、うまくいかずイライラがつのるばかり。メッシはチームプレーの一環として時に個人技での打開を図るので、はるかに効果的。

ロナウドは試合後「戦術が悪い」と不平たらたらだったそうな。ガチンコ勝負を挑んだマンUファーガソン監督の勇気は称えたいところですが。

5.26.2009

草木の育たない部屋。

部屋で草木を育てようとしても、なぜかすぐに枯れてしまいます。

最近ではバジルを植えたところ、あっという間に萎えてしまいました。その前には、驚くべきほど簡単だと言われるパキラでさえ、わずか数カ月の短命で終えてしまいました。今よりよほどズボラだった一人暮らしのときでさえ、1年以上は持ったのに。。。

草木が育たない部屋にはマイナスオーラがあると言いますが、果たして?

5.09.2009

『ロジカルリスニング』/船川淳志

「聞く・話す・読む・書く」というコミュニケーションの4大要素のうち、実は使用頻度が最も多いのは「聞く」である。なのに教育での優先順位は一番低い。コミュニケーションの質を高めるためには、頭を使って意識的に聞くことが必要である。

著者は“ロジカルリスニング”という造語を提示して、積極的傾聴スキルの重要性を世に問いました。確かに「聞く」ための授業というのは受けたことがありません。

具体的には、Description(事実、自分が取り入れた情報を描写する段階)、Interpretation(解釈の段階)、Evaluation(評価の段階)というステップに分ける「D.I.E.モデル」、思考の放棄症・思考の依存症・思考の歪み・思考の偏りからなる「思考の四大生活習慣病」などのフレームワークを紹介しています。

解説も全般的に理解しやすいため、トータルで見れば良書だと思います。ただ残念なのは、全8章のうち半分は背景説明で、肝心の実践部分はやや少ないこと。入門書としてはいいと思いますが、これを読んだだけで飛躍的にリスニング力が増すまでには至りません。

5.08.2009

『人を喜ばせるということ―だからサプライズがやめられない』/小山薫堂

『おくりびと』の脚本も書いた、放送作家・小山薫堂さんの新刊。

タイトルと「はじめに」だけパラパラっと読んで、何となく良さそうだと思って購入してしまいました。が、結論から言えば期待外れでした。

いつも人を喜ばせることを考えていれば、結果として仕事につながることもあるし、そうでなくても毎日が味わい深くなる。この考え方には非常に共感します。

しかし、具体例としてのサプライズ集があまりにひどい。サプライズばかり考えているためエスカレートしてしまったのか、一部を除いては、もはや“ドッキリ”や“ウソ”の領域なのです。これでサプライズされた相手は本当に喜ぶのか疑問…。

人によっては、さすが小山薫堂!と思う内容かもしれませんが、僕のテイストには合わなかったということでしょう。

5.07.2009

『おくりびと』

アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品。巷では生と死や家族愛をテーマに語られていますが、僕は偏見と戦う人の物語だと感じました。

納棺師という“人に言えない仕事”をすることになった主人公。妻には出ていかれ、幼馴染からは後ろ指を指される。でも一般論として、人が偏見を持つのは対象のことを知らないからです(世の戦争や人間関係におけるいざこざも大抵そうでしょう。相手のことを知れば知るほど、攻撃しようという気はなくなるはずです)。

この映画では、偏見を持った人たちが、身近な人物の死を通じて納棺師の仕事と存在意義を目の当たりにしたとき、理解や共感が生まれます。そういう意味で、これはコミュニケーションをテーマにした映画だとも言えるのではないでしょうか。ピンク映画という“人に言えない仕事”をしてきた滝田監督も、評価されたことで溜飲が下がったことでしょう。

“人に言えない仕事”ではないですが、“人に言ってもなかなか分かってもらえない仕事”をしている僕にとっても、大いに共感できる部分がありました。

5.06.2009

35歳の苦悩。

NHKスペシャル『“35歳”を救え あすの日本 未来からの提言』という番組を見ました。

団塊ジュニア世代の最後に位置する僕らは、精神科医の香山リカ氏に“貧乏くじ世代”と名付けられるなど、受験、就職とすべてにおいて激しい競争を強いられた世代。そんな今の35歳が希望を持てずにいるのは、将来の日本にとってよくない、というのが番組の主旨。

僕自身35歳として、共感できることが多かったです。と同時に、個人の努力ではどうにもならない状況にすでになっている、という考察には正直疑問を抱きました。個人的には、確かに大変な思いもしたけど、時代や社会のせいにはしたくないという意地が強くあります。

この番組を通じて、他の世代の人たちに団塊ジュニアの実態を知ってもらう契機になればよいとは思います。上の世代からも下の世代からも「甘えている」と見られることが少なくないので。

http://www.nhk.or.jp/asupro/index.html

5.05.2009

『新・都市論TOKYO』/隈研吾・清野由美

建築家の隈研吾さんとジャーナリストの清野由美さんが、東京の都市開発について対談した本です。俎上に上っているのは、汐留、丸の内、六本木ヒルズ、代官山、そして町田。それぞれの街の特徴と、日本の都市計画の問題点が非常に分かりやすく述べられています。

象徴的なのが汐留。旧国鉄の貨物駅跡地という広大なスペースだったのが悲劇でした。資金的に誰もリスクを負えなくなったことから複数のディベロッパーに分割した結果、建物の向きも外観もまるで統一感のない高層ビルが乱立することとなったのです。汐留を歩くときの分かりにくさや無機質な感じは、ここに起因していたのですね。

それと対照的なのが、森ビルが1社で開発した六本木ヒルズ。貸しビル業の限界を嫌というほど感じていた森ビルが17年もかけて500人もの地権者と地道な交渉を続け、執念の果てに完成させた現代東京の象徴です。ただ、ここでは逆に森稔社長のワンマン体制ゆえに、円環構造という新たな分かりにくさが生じてしまいました。六本木ヒルズも、行くたびに必ずといっていいほど道に迷ってしまいます。

本書を通じて感じたのは、スクラップ&ビルドを繰り返すことでしか土地の価値を上げられず、自転車操業的に再開発を繰り返す東京という都市の節操のなさでした。

書籍として見れば、内容は抜群に面白いのですが、図版がやや少なめ(しかも白黒)なのと地図がないのが難点です。…と思ったら、集英社のウェブにカラー図版が載っていました。しかも驚くべきことに本文(恐らく全文)が読めます! というか、このウェブの連載をまとめのが本書のようです。
http://shinsho.shueisha.co.jp/column/toshi/index.html

5.04.2009

『グラン・トリノ』

クリント・イーストウッド製作・監督・主演の映画。本人はこれが最後の出演作だと公言しているそうです。

朝鮮戦争に従軍した際の栄光を胸に古い価値観を保ち続ける頑固老人と、その隣に引っ越してきたモン族の一家。モン族の少年が不良たちにけしかけられ老人の愛車グラン・トリノを盗もうとしたことから、老人との交流が始まります。老人がうだつの上がらない少年に「男とは」「生きるとは」を身をもって示していくというストーリー。

途中までは老人のあまりの偏屈ぶりが笑えるなどコメディっぽい要素があるのですが、途中から人種や暴力といった重いテーマへと徐々に移行していきます。最後はある意味ハッピーエンディングであるものの、映画館のあちらこちらからすすり泣きの音が。心に沁み入るような珠玉の作品です。

http://wwws.warnerbros.co.jp/grantorino/